2025年も1/3を終えて、少し可処分時間にゆとりが生まれてきました。そうなると、生来の勉強好き気質が再燃して、「いっそ何か資格でも取ろうか」と考えるようになります。
と同時に、勉強したいな→折角なら何か形になって評価されるものを…→資格?、という過去に何度か繰り返してきたパターンに、自身の本質とは相容れない筈の「あわよくば」的な欲を自覚してもいます。
そこで今回、そもそも資格とは何か?を言語化してみることで、今後の大まかな付き合い方を決めてしまいたいと考えました。
まず、資格とは「特定の主体が、とある分野において必要かつ重要だと考える知識と情報のパッケージ」だと定義したいと思います。
次に、資格制度の現状を概観してみます。
総務省から2010年に公表された資料によれば、日本における「国の資格制度」は同年の時点で313あるそうです。
最も馴染み深いのは運転免許だろうと思いますが、他にもメジャーどころでは医師や公認会計士、弁護士などが含まれますし、「観光圏内限定旅行業務取扱管理者」など、舌を噛みそうなものも掲載されています。ここに民間資格まで加えると、国内に存在する資格の総数は3,000種類を超えるようです。
このうち、後者(民間資格)のうち、少なくとも98%は取得する価値がないだろう、というのが以前からの一貫した考えです。
その根拠としているのは、利に聡い界隈で当たり前になっている、「資格は取るものではなくて作るもの」という認識です。実際、「資格 ビジネス」や「資格 作り方」といった検索ワードをGoogleにかけると、各種マニュアルやセミナーの勧誘が数多くヒットします。
そうした発想の背景は、「資格」にまつわる次のような全体像を俯瞰すれば容易に分かります。
資格(ビジネス)の全体像:
監督省庁 → 発行主体 → (資格取得学校) → 有資格者
このうち、発行主体になることは実は難しくありません。たとえば自ら一般財団法人などを設立して所定の段取りを踏むことで、資格試験やスクールの運営、公式テキストの監修などが可能になります。さらに有資格者や受検者数が増えてくれば、公益財団法人などへのステップアップも視野に入りますし、関連する事業を併せて立ち上げて資格取得者に仕事をさせれば、息の長いビジネスを育てられる可能性があります。
つまり、これは「親」にとって旨味が大きい話であって、末端でコツコツと取得を目指して勉強するだけでは、”養分”になってしまうと理解した方が無難でしょう。
次に、いわゆる国家資格について考えてみたいと思います。
先に挙げた医師・公認会計士・弁護士のような国の資格制度においては、「業務独占資格」と言って「有資格者のみが独占的に行える業務」が規定されています。
ゆえに、従来であれば資格が参入障壁となって、取得にかけた時間と労力に見合ったリターンを期待することが可能でした。
しかし、日本が人口減少の段階に入った2009年辺りから、いわゆる難関資格を保有しているにも関わらず、「食べていくのがやっと」という窮状に陥った人の話を見聞きすることが増えました。現場の実態に合わせて国が政策や方針を修正するまでのタイムラグは概ね5年〜10年であることから、少しずつ需給調整が進んでいる資格が存在することも事実ですが、「国家資格=食える・稼げる」という方程式そのものは既に過去の遺物となりました。
ここから導き出されるのは、勉強が好き≒考えることが好きな人にとっての真に理にかなった選択は、①資格に投下する時間で本当に学びたいことを「つまみ食い」する、②必要に応じて有資格者に外注する、という2つになります。
たとえば個人的に携わっている業務(不動産業)に最も直結する資格は「宅地建物取引士」で、取得に要する勉強は一般的に200-500時間と言われています。この時間を捻出する代わりに、有資格者に託すパターンを考えてみましょう。たしか有資格者は1事業所でしか仕事ができないため、現役バリバリの人は雇えないかもしれませんが、「かつて会社に言われて取ったものの、今は家庭に入って持て余している人」を見つけてくれば、当面は十分に代替可能と結論づけられます。
また、自身が生業とする事業に同じく欠かせないのが税務に対する知識で、こちらに関連する資格は「会計士」や「税理士」となります。このうち前者は唯一、上場企業に対する監査業務を行えますが、まずは監査法人に所属して独立というルートが現実的だと考えれば、40歳を超えて目指すものではないでしょう。
次に後者の税理士、こちらを取得するのに掛かる平均的な勉強時間は4,000時間だそうです。効率化を追求すれば6割くらいを目指せる気がしますが、それでも2,400時間、1日5時間やっても1年ちょっとは必要という計算になります。意外とそのくらいで取れるなら良いかも?と思わないこともないですが、必要とされる知識全体を10とした時、ちゃんと役立てられそうなのは2~3くらいしかないため、ひとまずこちらも「保留」となりました。
結論、やはり自身にとっての最適解は「本当に好きなのは勉強である」という原点に立ち返って、資格を取らない勇気を大切に、学ぶこと自体を楽しみ続けることだと納得しました。その上で、有資格者と建設的に話すための勘所を押さえることに注力して、プロフェッショナルの集団を形成するはハブになるという生来の本分を全うしたいと思います。
【参考文献】
国の資格制度一覧